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2017-08

"Hiking" へのこだわり、"Run"ではなく。 - 2014.07.01 Tue

最近、山を走るトレイルランニングと登山者との摩擦、あるいは山を走ることによる自然破壊が、メディアで取り上げられることが増えて来ました。山で登山者の安全と自然を守る立場のぼくは、登山道を勢い良く、大きな足音と呼吸音で、目前まで走って来るトレイルランナーにポンと出会うと正直驚きます。

そうはいっても、山で出会うことが増えて来たので、この春、トレイルランニングの立場を理解してみようと、ぼく自身、小さな大会に出てみました。そして先頃、八ケ岳の南麓から三ツ頭を走るトレイルランニングレース、スリーピークス八ヶ岳トレイルのボランティアにも参加してみました。
この大会の運営本部の方達が、八ケ岳山麓周辺のトレイルを自主的に手直し補修したり、自然保護を訴えたりする活動を見聞きして共感するところもあったからです。ぼく自身、コース中、最高標高2500Mの折り返し点での分岐誘導を担当。ランナーが、頑張って、笑顔で登ってくる様子に、雨の中、声が枯れるまで応援し、行く先を指し示し続けました。みんないい顔してた!

そして、残念がら最後の最後、強まってきた雨の中、リタイヤした最後のランナーを送り届けようとする大会運営側5名の様子が変化してきました。トレイルランニングの実情を現す一つの事実として、記録しておきたいと思います。

その5名の方達は、それぞれ、コース上の運営管理を行う、ラストのランナーと一緒に行動する、怪我や体調の悪いランナーのファーストエイドを行うと言う重要で、かつ必ずしも走ってばかりはいられない立場で、相応のトレラン経験や体力を持つ方が選ばれているはずです。
その方達が、ずぶ濡れのトレランウェアという薄着のため、寒さや眠さを訴え始めたり、動きが鈍くなり、何度も足を滑らせて転け始めた様子を目の当たりにしました。最後尾のランナーと共に行動する役割のお一方は、頑張って下山しようとするリタイヤしたランナーに聞こえるように、「こんな行動レベルじゃあ、低体温になってしまうよ。」と声を上げていました。下山の先頭を引いていた方は気丈ですが、話しかけてみると、その方本来よりも顔が土色で、回答の口調に落ち着きもありません。その時点では、まだ軽度ですが、明らかに低体温症が出始めていました。

予報では時間が経つに連れ、昼頃から、標高が高い場所は雨の予報だったのに。麓では、奇跡的に晴れ間が見えたため、トレランがベテランと思われる運営サイドすら、晴天から少雨程度のトレイルランニングの軽装で、雨の中、標高2500Mまでコースを移動して来たもの思われます。ぼくと仲間、そしてリタイヤしたランナーは、登山用のレインウェアを持参・着用済み。雨と言っても、幸い予報通り風が無く、登山では良くある程度の雨だったのですが。

保温性の無い薄着でずぶ濡れのランナーは、自分で動き続けないと体温を維持できないようです。ラストのランナーと共に行動する役割を負う運営の方の中には、リタイヤしたランナーを置いて、先に降りてもいいですか、と言い出す方も出始めました。彼らもボランティアなので、どこまで役割の責任を全うすべきか。ここに至っては、自分の身が大切になるのでしょう。機能不全。

そこで、薄着の運営の皆さんには自分たちのペースで降りてもらい、分岐誘導係の本来の役目ではないのですが、登山用のレインウェアをきたぼくと仲間、地元ボランティアの方の3人で、脚が痛い女性ランナーに付き添って下山し、ぼくの車で大会運営本部に送り届けました。完走率が90%を越え、大いに盛り上がった大会の裏で、語られていない残念な事実です。

山の天候は変わりやすく、だからこそ、防寒や雨対策を忘れないことは登山の初歩の初歩。天気が良ければ覆い隠されるリスクへの脆さが、ちょっとしたコンディションの崩れで露呈してしまいました。トレイルランナーの皆さんは、山の安全管理や人命に対して、どういう意識なのだろうか。リタイヤしたランナーを、無事本部に送り届けたぼくは、素朴な疑問を持ったまま、トップランナーを表彰する華やかな閉会式も、なんだか色褪せて見えて、ひとり早々に帰宅した次第です。

このことは、大会本部の方とはお話をしました。その意図は、現在のトレイルランニングの波が止められないのなら、むしろ、この八ケ岳のトレイルランニング大会から、多くのトレイルランナー向けて、山の安全管理の実践、装備の大切さを発信してもらいたい、という点にあります。その自己責任の意識を前提にしてなお、山で活動することにはリスクがあるから、互いに協力しあい、弱い者を助ける文化があることを伝えてほしいと思います。

さて話は変わって、昨日のこと。梅雨の晴れ間、運動経験豊富な3人の元気なゲストをハイキング・ツアーにお迎えし、八ケ岳山麓のハイキング道で色んな自然を楽しみました。沢を渡り、牧場で牛たちを眺め、コナラが美しい広葉樹の森を歩き、山頂から360度の眺望を楽しむ。
水平移動が沢山できれば、その分、沢山の自然に出会うことができます。その手段として、例えば、幅の広い林道、県道など舗装路の長い長い下りは走って距離をかせぎました。観光に来た子供達を驚かさないように、気をつけて。
晴れ間とは言え、東京では豪雨に降られた大気の不安定な日。ガイドのぼくが背負っているものとは別に、皆さんの小さなザックには、お願いした雨具の他、各自の安全管理用具を詰めてもらっています。
これが、ぼくの” Fast(早足) Hiking ”。部分的にルートの一部を、安全を確かめた上で走ることは、沢山の自然を楽しむための手段とすることも出来ます。

この日、一緒に一日をすごしたスポーツのプロフェッショナル。お一人は、陸上競技の元アスリートですが、ランニングと不整地を行くランの違いを、すぐにわかっていました。そして、この一言、「ゴールに向けて、タイムを意識して山を走るトレイルランでは、周りの色々な自然に目が入らないだろうなあ。それは、もったいないなぁ」。
少しづつ咲き始めたニッコウキスゲに、奇麗だねと足を止め、小鳥や蝉や虫の声の数を、目を閉じて指折って数えてくれた皆さんの言葉だから嬉しいです。ありがとうございます。一日を過ごして、ぼくの思いに共感頂けたかなぁ、と言う思いです。

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ぼくは、”トレイルランニング”はやりません。例え、フィールドが同じ山だとしても、根っ子が「ランニング」と「野山歩きのハイキング」では、どこか気持ちの持ちようが違うように感じます。

ぼくは、あくまで、ゲストと野山を歩き、自然を楽しみたい、と思います。そこに競技の要素は必要ありません。自然をたっぷりと味わい、楽しむひとつの手段として、ゲストの運動経験に応じて「駆け足」も取り入れた「ハイキング」にこだわります。その根源には、自然への畏敬の念と、安全への準備を怠らない登山者の倫理感を置きたいと思っています。

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(道幅が広くて傾斜が緩やか、行き交うハイカーがいない緑の林道で、深呼吸を兼ねて走ってみました。ゲストも笑顔です。)

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「山のたまてばこ」について

自然の中で過ごすのは、とても気持ち良いですよね。その楽しさから得られる気づきを子ども達と分かち合いたい、その思いから、「自然科学塾 山のたまてばこ」を主催しています。「山たま」は、自然のつながりの中にある不思議を、体験学習を通じて感じ、気づき、考えようとするプロセスを支援する場です。 企業の皆様には、「サミット・コンサルティング」から、登山を通じたチームビルディングをご支援しています。

プロフィール

も~り~

Author:も~り~
公益社団法人 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド(ステージ2)。

長野県諏訪郡富士見町を拠点に、主に南・北八ヶ岳、北アルプスでガイド活動を展開中。スウェーデンのクングスレーデンを歩いて以来、ロングトレイル・トレッキングの楽しみ方を、積極的にご紹介しています。

経営コンサルタントの経験を持つガイドとして、企業の支援にも力を入れています。

自然体験活動分野では、清里KEEP協会のインタープリターズ・キャンプ修了。子供たちが自然に親しむお手伝いも大切にしています。

山で出会ったこと、身の回りの小さな自然や子供たちの様子を、つづって行きます。

スウェーデン社会研究所 会員
公認会計士
経営学修士 (MBA)

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