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2010-08

穂高ガイズ _ 日経朝刊 2010/8/29 - 2010.08.29 Sun

「去年の夏、涸沢で知り合った、伯爵や元帥、熊襲のことを思い出していた。あのような生き方もあるのだ。岳彦はいざとなったら涸沢に入って、涸沢貴族の仲間入りをしようと考えていた。」
(”栄光の岩壁”(上)新田次郎)

今朝(2010年8月29日)の日経新聞朝刊より抜粋。

”「登山者とともに穂高を守りたい」。北アルプス穂高連峰にある涸沢小屋(長野県松本市、標高2350メートル)に暮らす谷剛士さん(29)ら5人が、山岳ガイド組織「穂高ガイズ」を結成、ガイド料金の一部を登山道整備などに充てる試みを始めた。
(中略)
谷さんによると、穂高連峰の登山道は各山小屋が国や県の予算を使って整備している。しかし予算は十分ではなく、山小屋のボランティアでまかなっているのが実情だ。
穂高の将来に不安を感じ「ガイド活動を通じて山を守ろう」と決意。7月に穂高ガイズを発足させた。ガイド料金の15%を涸沢小屋周辺の登山道整備や、遭難救助用の装備品調達に使う。
(以下、略)”

最近、登山道や岩が崩れているという話を良く聞きます。
その原因として、大雨に起因することも多いそうです。
大雨で土砂や岩が流れる背景には、地震で地盤がもろくなっていることもあるでしょうが、失った森林の影響や温暖化による乾燥等、背景には、異常な気象があるのかもしれません。

この「穂高ガイズ」の取り組みを始められた山岳ガイドの谷さんは、ぼくがいつもお世話になっている山岳ガイド成田賢二さんや庭野正和さんと、山岳ガイド認定試験の合格同期生。直接お会いしたことは無いのですが、山、そして山に関わる人に対して真直ぐな熱い信念を持つ方だと伺いました。

穂高ガイズの取り組みは、山小屋や山岳ガイドの方達が自分たちのビジネスを続けて行く環境整備とも言えますが、何より「穂高も登山者も守りたい」という岳人の信念に支えられたものだと思います。

きっと色んな意見があって、100%の方が肯定的ではないかもしれません。
ぜひ、支援者に恵まれて、この取り組みが継続されることを祈っています。
頑張ってください!

ところで、山には色んな権利が絡むようですが、一面では、誰のものでもなく、みなが平等に利益(山に登って気持ち良い、眺望を楽しめる等)に預かれる存在-「公共財」だと思います。
だからこそ、その「公共財」の面倒を人任せにして、「タダ乗り」することも可能です。

例えば、海や空の汚れ、子供達が遊ぶ公園の環境悪化など、身近なところに幾らでもある話ですが、こちらには、だんだんと人々の目や努力が注がれるようになってきたと思います。

しかし山という存在、とくに標高の高い岩稜を伴う山となると、皆が平等に何かしらの”利益”にあずかる「公共財」という意識を持ちにくいのかもしれません。
また登山環境の保全に対する投資の効果が測りにくいこともあって、お役所が皆のために使うお金も、なかなか回って来にくいと言えそうです。

一方で、高い山が「公共財」として維持・保全され、訪れる登山家や観光客が満足感という利益を、山の環境を壊すことなく かつ 安全に得られるようにするためには、確かに資金が必要だと思います。

多くの山小屋の皆さんが、普通に歩いても高度感バリバリの山で、ボランティアベースで登山道を保全して下さることには、本当に頭が下がる思いです。でも、ボランティアベースで続けて行くのは限界があろうと思います。
お役所への働きは勿論、ボランティアも大切ですが、それだけをアテにしていると「公共財」の環境を守る取り組みが先細りしてしまいそうで心配です。

もちろん不注意など、個人の原因もあるでしょう。
でも登山道であっても、バリエーションルートであっても事故のニュースを聞くたび、とても悲しいじゃないですか。

なんとか、お役所の動きを補完する取り組みはできないでしょうか。

ぼくは、その視点から、今回、穂高ガイズが作ろうとする新しい「山の経済的なメカニズム」が、山を守る活動を”持続的なもの”とし、山岳ガイドも僕たち登山を愛する者も、みんなが共生できる取り組みになれば良いなあと思っています。

都会に住むぼくができることは、まず、山を荒さない小さな行動を積み重ねながら、山を守ろうと主体的に動く皆さんを支持してゆくことですね。
だからこそ、穂高ガイズの皆さんの取り組みの「質の高さ」にも、着目してゆきたいと思います。

ところで、高い山の環境を守ることに、一般企業の資金や技術という力は、どれくらい使えるのでしょうか。
登山道の保全すら、ままならない資金状況ですから、一般企業のビジネスベースでの関与は、難しいかもしれませんね。

だけど、ボランティアに任せるには、あまりに山は大きいです。
「穂高ガイズ」の取り組みが、企業の視点を、山に向けさせる一つのキッカケにならないものかなぁ、と思います。

「山のたまてばこ」という小さな自然体験活動や、このブログを通じた限られた世界ですが、自分なりに自然と向き合いたいぼくとしては、これまでの枠組みを超えようとする「穂高ガイズ」の取り組みを知って、希望と熱意をもらった気がしています。

ぼくも秋には、涸沢を訪れる機会があるかもしれません。
その時は、穂高の稜線を見上げながら、山を守る方々の様々な取り組みを、考えてみたいと思っています。

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「山のたまてばこ」について

自然の中で過ごすのは、とても気持ち良いですよね。その楽しさから得られる気づきを子ども達と分かち合いたい、その思いから、「自然科学塾 山のたまてばこ」を主催しています。「山たま」は、自然のつながりの中にある不思議を、体験学習を通じて感じ、気づき、考えようとするプロセスを支援する場です。 企業の皆様には、「サミット・コンサルティング」から、登山を通じたチームビルディングをご支援しています。

プロフィール

も~り~

Author:も~り~
公益社団法人 日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド(ステージ2)。

長野県諏訪郡富士見町を拠点に、主に南・北八ヶ岳、北アルプスでガイド活動を展開中。スウェーデンのクングスレーデンを歩いて以来、ロングトレイル・トレッキングの楽しみ方を、積極的にご紹介しています。

経営コンサルタントの経験を持つガイドとして、企業の支援にも力を入れています。

自然体験活動分野では、清里KEEP協会のインタープリターズ・キャンプ修了。子供たちが自然に親しむお手伝いも大切にしています。

山で出会ったこと、身の回りの小さな自然や子供たちの様子を、つづって行きます。

スウェーデン社会研究所 会員
公認会計士
経営学修士 (MBA)

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